vol.10 ヨーロッパ生地事情
(コットン編)その一 |
オートクチュール用やスーパーブランド服用の最高級生地の生産地は、イタリアを中心にしたヨーロッパに限られています。
それは、ファッションの伝統と職人技術に裏打ちされた永い歴史の中より造り出されてきます。
ヨーロッパの生地・服地業界では、日本で言う四季を2つのシーズンに分けまとめられています。春・夏が1シーズン、秋・冬が1シーズン、いずれも、春、秋物生地は品揃えも少量で、夏はコットン生地類を主体に冬はウール生地類を主体とし天然素材生地を中心に展開されます。
ではまず、春・夏物生地の説明をしましょう。
春物生地として紹介される服地はシルク生地が主力で、明るい色調のプリント生地が様々揃えられます。
その他はやはり明るい色調のファンシーツイード類が入ります。
また、ごく一部シルクコットン混紡シルク生地、リネン混紡生地など種類は限られますが、コットン生地、レーヨン混紡のコットンツイード生地があります。
春夏物生地の内、春物生地の構成は全体の10〜15%程しかありません。
あとの85〜90%はコットン生地主体の夏物と春物的なファンシー物生地(一部の刺繍生地やレース生地類)で組まれています。
さて、夏のイメージといえばコットン生地と言って良いでしょう。
何と言っても高級素材生地は、その希少性と風合いを至高の物と考えます。
それゆえ、化学繊維生地で通風性などがコットン生地の特性とも共通しており、染色性にも優れているポリエステル系生地はあまり使用しません。
ポリエステル生地は日本がその生産国であり、機能性としてシワに強く水洗いが出来る等の長所はありますが、吸水性や通風性までは天然素材生地に勝ることはできません。
それ故、残念ながらヨーロッパにおいては、ポリエステル生地はシルク生地の安価な代用品と言うイメージみられているようです。
夏物で特に高級と見られる生地は、コットン生地やリネン生地にシルクを混紡したものや、コットン地に刺繍を施したエンブロイダー生地やレース生地類です。
エンブロイダー生地はスイスメーカーが有名で、世界一の高級品生地を作り上げる「ヤコブ・シェーファー」があります。
このメーカーは、エンブロイダー生地の他、スパンコール等のファンシーな生地のみを作る専業メーカーで、「パリコレ」等で著名なデザイナーが使う華やかなファンシー生地は、殆どこの「ヤコブ・シェーファー」の品を使っております。
そのデザイン性はまさに世界一の名に恥じない逸品です。
又、一方で、コットンボイル生地のプリントに繊細な刺繍を施すメーカーに、「ビショップ」があります。
いずれのメーカーの品でも、一着分が日本の価格で数10万円の市価が入る高額品生地です。
これより価格面でポピュラーなメーカーとしてオーストリアのメーカーがありますが、いずれにしても刺繍ものは高級品となります。
また、以前はコットンレース生地が良く日本に輸入されてきましたが、今は殆ど姿を見せなくなってしまいました。
コットンのケミカルレース生地など、驚く程高価な品もありました。
その他にも、コットン生地では今から10年前くらいまで多くの高級カットボイル生地が有りました。
スイスではシーアイランドコットンを使った「ベーゼ」と言うメーカーやイタリアでは「ルイジベルガー」等が盛んに高級カットボイルプリント生地を生産しており、中には着分10万円以上の市価の品々もありました。
しかしながら残念なことに昨今では、このような品が非常に少なくなりました。
ファッションのトレンドの変化もあるのでしょうが、非常に残念です。
昨夏ではスイスの「ゲスナー」や韓国のカットボイル生地メーカー、「オクテックス」等に絞られており他のメーカーは作っておりません。
イタリア物では「ネフィーラ」や「ルイジベルガー」等が種類は少なくなってしまいましたが生産を続けております。
しかしながらこのような状況の中、今季もこのカットボイル生地のみを作り出している特異なメーカーとして、スイスの「コシラン」があります。
薄い張りのあるコットンボイル地で、素晴らしい氷の様な光沢を発するプリントです。
市価も7〜8万5千円と絞られております。
この張りと光沢は、数年水洗いして着て頂いてもその風合いが失せない高い品質を誇り「コットン生地のダイヤモンド」と言われております。
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